飲み物、特に炭酸飲料やスポーツドリンクについて

About drink

 「食事の基本」で、基本的に「糖尿病だからといって食べちゃいけないものはない」とお伝えしましたが、1つだけ例外があります。それは甘い飲み物です。甘い飲み物だけは絶対に飲まないようにしてほしいのです


 甘い食べ物は、もちろん糖尿病には好ましくありません。ですがそれ以外の点をしっかり気を付けていれば、一切食べてはいけない、という程ではありません。週2~3回、食事のデザートとして多少なら構わないでしょう。しかし甘い飲み物だけは絶対にやめてほしいのです。食べ物というのは、胃を通過するのにある程度時間がかかりますし、消化する必要があるので、体内で血糖に変化するのに時間がかかります。その間に体もインスリンを出す準備をすることができます。しかし飲み物というのはあっという間に胃を通過し、消化する必要もないので、即座に吸収され血糖になります。その為、食べ物に比べると非常に血糖を上げやすく、膵臓にも負担をかけてしまうのです。


 甘い飲み物を飲むことで血糖があがり、血糖が上がることで喉が渇くようになり、ますます甘い飲み物を飲むようになる、という悪循環が引き起こされると、とてつもない高血糖になり、ついには具合を悪くして入院することになります。こういった患者さんが後を絶たないので、日本糖尿病学会ではこの状態を「ソフトドリンクケトーシス」と名付けているぐらいです(ケトーシスとは高血糖により具合が悪くなった状態の一種です)。


 甘い飲み物であれば、砂糖の入ったコーヒーでも、コーラなどの炭酸水でも、果汁ジュースでも、栄養ドリンクでも、全てやめてください。特にスポーツドドリンクには気を付けてください。熱中症予防に良いように勘違いしている人も多く、勧められたことがある方も多いでしょう。糖尿病の方が飲むと高血糖になるばかりか、高血糖により脱水が助長され、むしろ熱中症をおこしやすくなる危険すらあります。ですから、スポーツドリンクも含め、甘い飲み物は原則全てやめましょう。栄養ドリンクも同様です。確かに滋養強壮のための成分が入っているかもしれませんが、飲みやすくするために大量の糖分が入っています。風邪をひいたときに1本、2本飲むくらいなら良いかもしれませんが、日常的に飲むのはやめましょう。


 どうしても甘い飲み物が欲しいときは、人工甘味料を用いたカロリーゼロの飲料であれば、構いません。これらのカロリーゼロの飲料は基本的にほとんど血糖を上げることはありません。最近ではコンビニでもいろんな種類のカロリーゼロ飲料が売っていますし(コーラやサイダー、カルピスにも)、スーパーでもカロリーゼロの甘味料が売っているので、これをコーヒーなどに入れて飲む分には構いません。あまり大量にとるのは良くないかもしれませんが、今まで甘い飲み物を飲む習慣があった人なら、まずはカロリーゼロのものに換えてみるのも良いでしょう。人工甘味料について詳しく知りたい方は、人工甘味料についてのページもご覧ください。


 余談ですが、糖尿病ではない人は脱水予防にスポーツドリンクを飲んでも良いのかというと、それも微妙です。理由は2つあります。まず、夏の暑さで汗として失われるのは水分と塩分ですが、スポーツドリンクに入っているのは大量の糖分と、水分、そして若干の塩分です。明らかに糖分が余計で、脱水予防にはなっても太りやすくなってしまいます。太れば当然いろんな病気が増えます。もう一つの理由は、自分でも知らずに糖尿病の体質を持っている方も多いからです。実はソフトドリンクケトーシスになって入院する方のほとんどは、もともと糖尿病がない方です。きちんと専門医を受診して糖尿病の体質を持っていないことを確認していれば、スポーツドリンクを飲んでも害はありませが、普通はそこまでしませんよね。実は糖尿病の体質を隠れて持っていたのに自分では気が付かず、スポーツドリンクをたくさん飲んだばかりに糖尿病を発症してしまう方も多いのです。スポーツドリンクはあくまでも「スポーツをする人」のための飲料です。激しいスポーツをすると大量の汗をかくとともにエネルギーも消費しますから、そのエネルギー補給を考えて作られているのです。炎天下で部活動中の学生には良いかもしれませんが、単に暑くて汗をかく人の飲み物ではありません。ですから基本的には一般の人も含めて、熱中症予防にスポーツドリンクはオススメできません。


 なお当院では、糖尿病にはなっていなくても、自分が糖尿病の体質を持っているのか、将来糖尿病になりやすいのかどうかを調べることもできます。心配な方は是非一度ご相談ください

ページトップ