糖尿病とは

About diabetes

 皆さん糖尿病とはどんな病気かご存知でしょうか?読んで字のごとく、「尿に糖が出る病気」でしょうか?間違いではありませんが、50点というところです。これは昔、血糖が簡単に測れなかった時代の話です。現在では糖尿病は、「血糖が高くなる病気」と定義されています(より医学的に正確に言うと「血糖が『慢性的』に高くなる病気」です)。ですから健康診断などでも血液検査で糖尿病の有無を調べますよね。

 ではなぜ血糖が上昇してしまうのでしょうか?そのためにはまずインスリンについて知る必要があります。インスリンというと注射というイメージがあるかもしれませんが、インスリンは膵臓という内臓から分泌されるホルモンです。インスリンは血糖を下げる作用を持つため、インスリン作用が不足すると血糖が上昇してしまうのです(このインスリンと同じ作用を持つ注射薬のことを「インスリン製剤」と呼びます。ただし呼びづらいので、日常的にはインスリン製剤のことも、単に「インスリン」と呼んでしまっています。ちょっとややこしいですね。ここで説明するインスリンは、全てホルモンのインスリンのことなので、勘違いしないでください)。

 インスリン作用が不足してしまう理由は大きく2つあります。1つはインスリンそのものの不足、もう一つはインスリンの効きが悪くなってしまうことです。まず1つめのインスリンそのものの不足というのは、膵臓が十分なインスリンを出さなくなってしまう状態です。これを医学的には「インスリン分泌不全」と呼んでいます(不全とは、完全ではない状態のことです)。日本人はもともとあまり膵臓が強くない人種ですが、もちろん日本人の中にも個人差があります。特に糖尿病家系の人たちには、インスリンを出す力が弱い方が多いのです。こういった人たちの膵臓に負担がかかったり、或いは加齢により膵臓の機能がさらに低下したりすることで、十分なインスリンが出せなくなってしまい、血糖が上がってしまうのです。

 2つめの、インスリンの効きが悪くなってしまうことを、医学的には「インスリン抵抗性」と呼んでいます。体がインスリンに「抵抗」している状態です。いくらたくさんインスリンを出しても、それがきちんと血糖を下げてくれないのです。食生活の乱れ、運動不足、そしてそれらが加わって起こる内臓脂肪の蓄積などが、このインスリン抵抗性を引き起こします。

 ほぼ全ての糖尿病患者さんは、「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」のどちらかだけを持っているというわけではなく、両方が原因となっています。ただしその割合は人によってさまざまです。明らかに食べ過ぎで肥満していて糖尿病になった方というのは、インスリン抵抗性が9割でインスリン分泌不全は1割かもしれませんが、こういった方は意外と珍しいです。多少お腹は出ているけどそんなに太ってはいないし、確かに運動不足だけどそんなにたくさん食べるわけでもない、こんな糖尿病患者さんはおそらくインスリン抵抗性が5割、インスリン分泌不全が5割くらいでしょう。実はこんなタイプの人が一番多いのです。中にはむしろ痩せ型で、むしろ少食なくらい、でも血糖は高い、というインスリン分泌不全が8割、インスリン抵抗性が2割という糖尿病患者さんもいます。

 まとめますと、糖尿病は「インスリン分泌不全(インスリンを出す力が弱い)とインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い)が合わさって起こる、高血糖が続く状態」です。そしてインスリン分泌不全とインスリン抵抗性がどの程度の割合で作用しているのかは人によって様々です。

 この割合が様々であるために、治療も人によって様々です。糖尿病治療は、患者さんのインスリン分泌不全とインスリン抵抗性の割合を見極め、患者さん一人一人に合った治療を提供していく必要があります。そしてこの割合を見極めるためには、患者さんの体型を見るだけではなく、生活習慣に問題がないかを把握し、内臓脂肪量や筋肉量の測定、血中インスリン値の測定など、各種検査を組み合わせて判断する必要があります。このように患者さんに応じたオーダーメイドの治療を行うのは、糖尿病専門医でないと難しいです。もしこれまで糖尿病専門医を受診したことがなければ、一度は専門医の診療を受けることをお勧めします。

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