検査結果の見方①

HbA1cと血糖値

ご自分の検査結果を見ていますか?

 糖尿病で通院していると、毎月採血検査を受けると思います。その場で医師からも結果説明がありますが、たくさんある項目を全てその場で理解するのは難しいですから、ぜひ帰ってからもご自分で一度見てみましょう。とはいっても、どこを見てどう見て良いか分からないですよね。このページでは、まずは糖尿病に検査でもっとも重要なHbA1cと血糖についてご説明します。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)  

HbA1cは、ヘモグロビンエーワーンシーと読みます。長いので、略してA1c(エーワンシー)と呼ばれることも多いです。糖尿病治療の上で最も重要な検査所見ですので、この項目については必ず覚えて、毎回確認するようにしてください。

この数値は、Hb(ヘモグロビン=血液中の酸素を運ぶ赤い成分です)のうち、何%に糖が結合しているかを測定しています。健康な方は正常値は5.5%以下です。HbA1c5.6~5.9%はグレーゾーンで、調べてみると全く健康な場合もありますし、糖尿病予備軍の場合もあります。健康な方がHbA1c6.0%以上となることは比較的稀で、HbA1c6.0%以上になると糖尿病予備軍の可能性が高くなります。HbA1c6.5%以上となると糖尿病の診断となります(厳密にはもう少し細かい診断基準があります)。

糖尿病の方には、やはり健康な方と同様の血糖値を目指していただきたいので、HbA1c6.0%未満、つまりHbA1c5%台を目標としています。ただしインスリンや一部の低血糖を起こす薬剤を使用している方、ご高齢の方の場合は、正常な血糖まで下げようとするとかえって低血糖などをの副作用を起こす危険もあり、HbA1c7.0%未満など、個別に甘めの設定をすることもあります。ご自分の目標値に関しては一度主治医に確認しましょう

血糖  

血糖は、その名の通り血液の中の糖分です。正確には血液中のブドウ糖濃度を測定しています。そもそも糖尿病とは、「慢性的に血糖値が上がる病気」でしたね。

血糖は食前と食後でも変わってしまうので、通常健診などでは食前=空腹時血糖を測定します。正常値は100mg/dL未満です。100~109mg/dLはただちに異常ではありませんが、「正常高値」と呼ばれており、将来糖尿病になるリスクが高い状態です。110~125mg/dLが糖尿病予備軍(より正確には耐糖能異常、impaired fasting glucose)と呼ばれる状態です。126mg/dL以上で糖尿病と診断されます。

糖尿病の方も健康な方と同様に、できれば100mg/dL未満、少なくとも110mg/dL未満には抑えたいところです。ただしHbA1cと同様に、目標値は一人ずつの治療内容や病状を考慮して決めますので、詳しくは主治医に確認しましょう。

なお健康な方の血糖は70~99mg/dLですので、70mg/dL未満になると下がりすぎで、これを「低血糖」と呼んでいます。

食後血糖に関しては、健康な方では140mg/dL未満が正常です。糖尿病の方の場合は180mg/dL未満が目標になります。もちろん健康な方と同様に140mg/dL未満にできればベストです。なお食後血糖というのは、糖尿病の方の場合は食後2時間(食事を食べ始めてから2時間)が最もあがりやすいので、このタイミングで測れると良いでしょう。

HbA1cと血糖値の関係  

糖尿病は血糖値が高くなる病気です。ではなぜ血糖値だけではなくHbA1cを検査するのでしょうか?それは血糖値は非常に変動しやすいからです。検査の前に食事をとったか、何を食べたか、何時間前に食べたか、検査の前に体を動かしたか、そういった様々な要素で血糖値は変わってしまいます。糖尿病はゆっくりと進む病気ですから、検査の日にたまたま血糖値が高かったか低かったか、というのはあまり体に影響しません。普段の血糖値がどうなっているのかが重要なのですが、普段の血糖値を知るのは難しいですね。

一方でHbA1cは検査の前の1~2か月の血糖値の平均が反映されると言われています。ですから、朝食べたかどうかは数値に関係しません。「明日受診だから、今日は間食を控えておこう」と1日だけ気を付けても、やはりHbA1cは変わりません。糖尿病合併症が進むかどうかは、たまたま検査した1日の血糖値よりも、1~2か月の平均値を反映するHbA1cの方が重要なのです。

注意しなければいけないのは、血糖値がHbA1cに反映されるのにはタイムラグがあるということです。たとえば新しく運動を始めた時でも、次の採血ですぐにHbA1cが下がるとは限りません。運動を始めてから2~3か月してからようやくHbA1cが下がってくる、ということも良く目にします。ここを正しく理解していないと、運動を始めてすぐのHbA1cが下がっていないのを見て、「結構頑張ったつもりなのに、あんまり意味なかったのかなぁ」と続ける意欲が失せてしまうので、注意してください。こういう時にはむしろ血糖値の方が役に立つこともあります。

つまり、普段は1~2か月の平均値を示すHbA1cを目標に治療し、急激な変化があった場合などで、今現在の状況を知りたいときには血糖を見て判断しているのです

HbA1c、血糖は必ず当日に  

たまに、忙しいからといって当日の検査結果を聞かずに帰ろうとする方がいらっしゃいます。また、医療機関によっては当日にHbA1cの数値が出ないところもあります。しかしHbA1cはただでさえ1~2か月前の数値が出ますから、さらに先月の結果を見て診察するとなると、実質的には2~3か月も前の血糖を見て診察することになります。これでは適切な治療はできないのはお分かりいただけますね。当院は糖尿病専門ですから、もちろん検査結果を当日に結果をご説明できますし、HbA1cと血糖だけなら30分以内に結果をご説明可能です。少なくともHbA1cと血糖値は、必ず当日に採血結果を聞いて帰りましょう。

(なお肝機能や腎機能、脂質などの数値は、当日に結果を診て診察したい場合と、後日でも良い場合があり、人によります。)

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