検査結果の見方①

HbA1cと血糖値

その他の採血検査について

 糖尿病の治療状況を見るのには一見HbA1cと血糖だけあれば良いように思いますが、実際には様々な項目の検査が必要です。例えばHbA1cの正確性を調べるためにHb(ヘモグロビン)の数値が必要です。また薬の副作用が出ていないか、あるいは脂肪肝がないかを調べるのには、肝機能の数値が必要です。また腎症が進行していないかを確認するために腎機能の数値も必要になります。ここではそれらの数値について詳しく説明していきましょう。

Hb(ヘモグロビン)  

Hbは、ヘモグロビンと読みます。血液の中の赤い成分です。血が赤いのは赤血球と呼ばれる細胞が血液の中にあるからなのですが、赤血球が赤いのはこのHbと呼ばれる物質を豊富に含んでいるからです。Hbが低いことを「貧血」と呼びます。基準値は年齢や性別にもよるのですが、おおむね11~12g/dL以上が正常です。

なぜ糖尿病で貧血の値が重要かといいますと、HbA1cにかかわるからです。HbA1cは「Hbのうち何%に糖が結合しているか」を見る検査です。ですから、Hbそのものの値が正常でないと、HbA1cも正常でなくなってしまうのです例えば、貧血の時にはHbA1cが本当の値より低く出ます(※)。Hbをチェックしていないと、「今回はHbA1cが下がっているので、きっと血糖が良くなったんだな」と思っていたら、実は貧血になってしまっているだけで、実際の血糖は全く変わっていなかった、ということもあり得ます。ですから、HbA1cがきちんと正確な値になっているかを判断するために、Hbも必ずセットで測定するのです。

(※教科書的には、急性貧血の貧血の際にはHbA1cは本当の値より低く出るが、慢性貧血の際にはむしろ高めに出る、となっています。しかしあまり貧血でHbA1cが高めに出るのを見たことがありません)

なお検査結果には白血球数、血小板数なども載っているかもしれません。これらの項目は糖尿病でとても重要というわけではないのですが、Hbを調べるときはHbだけを調べることができず、必ずこれらの項目もセットで結果が出てきてしまうのです。「どうしていつも正常なのに毎回調べるんだろう」と思われるかもしれませんが、実はそういう事情があります。


 

AST、ALT、γGTP  

AST、ALT、γGTPは肝機能を示す数値です(AST、ALTは昔はGOT、GPTと呼ばれていました。今でもそう表記しているところもあるかもしれません)。AST、γGTPはアルコールの影響を強く受け、ALTは脂肪肝の影響を強く受けます。ともに生活習慣の影響を強く受けるのです。

糖尿病は内臓脂肪の蓄積が大きな原因となっています。脂肪肝も内臓脂肪の一種ですので、食事・運動療法によって内臓脂肪が変化しているかを見るのに、肝機能は重要な指標となります。肝機能はHbA1cと異なり、比較的タイムラグがなく生活習慣が反映されます。例えば運動療法を始めて1か月後の外来で、HbA1cは改善していないけれど、ALTが下がり始めている、というのは良く目にします。これを見ると、「HbA1cは下がっていないけれど、内臓脂肪が落ちてきているようです。運動の効果が出ているので、このまま頑張ればきっと来月にはHbA1cも下がってくると思いますよ」と説明することができます。

また肝機能はお薬の選択にもかかわってきます。肝機能の数値が高く脂肪肝がある方は、内臓脂肪が多くインスリンの効きが悪いことが予測されるため、インスリンの効きを良くするお薬を選択します。逆に肝機能が正常なのにHbA1cだけ高ければ、体内で作られるインスリンの量が少ないことが予想されますので、実際にインスリン量を測定するなどして確認していきます。

それ以外にも肝機能を測定する理由はもう一つあります。生活習慣病で用いられるお薬はほとんどは安全性の高いお薬ですが、それでも稀に副作用で肝機能に異常をきたすことがあります。こうなると使用を中止しないといけませんから、副作用のチェックの意味でも肝機能の測定は重要です。

 

総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(TG)  

総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(TG)はいずれも体内の脂質です。これらの数値に異常が出ることを「脂質異常症」と呼んでいます。脂質異常症は糖尿病と非常に合併しやすく、糖尿病患者さんの半分以上は脂質異常症も合併しています。

HDLコレステロールはいわゆる”善玉”コレステロールで、数値が高い方が動脈硬化を起こしづらいことが分かっています。基準値は40mg/dL以上です。上がりすぎを気にする必要はありません。生まれつき非常にHDLが高い方も稀にいらっしゃいますが、特に心配はいりません。

一方、LDLコレステロールがいわゆる”悪玉”コレステロールで、数値が高いと動脈硬化性の病気が引き起こします。糖尿病患者さんであれば基準値は120mg/dL未満ですが、過去に心筋梗塞を起こしたことのある患者さんの場合は最低でも100mg/dL未満、可能であれば70mg/dL未満が目標値となります。基本的には低ければ低いほど良く、下がりすぎを気にする必要はありません。ちなみに生まれたばかりの赤ちゃんのLDLは40-50mg/dL程度だそうです。

コレステロールは検査の日の食事の影響をほとんど受けませんので、朝食を食べてきても影響は出ません。

中性脂肪(TG)も”悪玉”と一緒で、数値が高い方が動脈硬化のリスクが高くなります。中性脂肪は食事の影響を受けるので、空腹時の採血なら150mg/dL未満、食後の採血なら175mg/dL未満が目標となります。

脂質異常に関しては詳しくは別のページでご説明します。

 

BUN, Cre  

BUN(ビーユーエヌ)、Cre(クレアチニン)は腎機能を示す値です。基本的には数値が高い方が腎機能が悪化していることを示します。大事なのはCreの方で、正常値は年齢、体格、性別などによりますが、おおむね1.0mg/dL以下です。これも年齢等にもよりますが、Creが2.0mg/dL以上になると腎臓の機能が正常の半分未満に低下してしまっている可能性が高く、将来的な透析を見据えて腎臓専門医に紹介する段階になります。

BUNはCreが上昇している原因を推定するのに見ます。BUNとCreが同程度に上昇していれば、糖尿病腎症などが考えられますが、BUNの方が明らかに上昇していれば脱水など別の原因が考えられます。そのためBUNとCreはセットで検査することがほとんどですが、直接腎機能を表しているのはCreの方ですので、皆さんはご自身のCreに注意していてください。

もっとも、Creが上昇してくるのは糖尿病腎症がかなり進んだ段階です。Creが上昇してきてから慌てて対処しても遅いので、通常はCreが正常なうちに、尿たんぱく等を見て、早めに対処していきます。詳しくは糖尿病腎症についてのページでご説明します。

尿検査  

尿検査には複数の項目がありますが、一番重要なのが尿蛋白です。尿蛋白は腎臓の状態の指標になります。腎臓は血液を濾過(ろか)して老廃物や余分な水分、塩分を尿として排泄する内臓です。ですから尿に異常があるということは、腎臓に異常がある可能性があるということになります。尿蛋白の基準値は(-)~(±)です。(±)は健康な方でも出ることがあります。異常の疑いがある、というわけではないので、心配しないでください。(+)以上になると異常の疑いがあります。

血糖が気軽に調べられなかった以前は尿糖も重要な検査でしたが、現代ではあまり尿糖が重視されることはありません。血糖がかなり高くならないと、尿糖には異常が出ないからです。なおSGLT2阻害薬と呼ばれるお薬を飲んでいると、尿糖が陽性になりますが、正常な反応なので気にしないで大丈夫です。

その他、尿潜血や尿白血球という項目もあります。これらは糖尿病治療で重要な項目というわけではないのですが、尿検査は尿蛋白だけ調べる、ということはできず全てセットで結果が出てくるのです。ちなみに尿潜血も基準値は(-)~(±)です。ただし健康な方でも(+)が出ることもしばしばあります。尿検査は試験紙の色で判断する、やや大雑把な検査なので、実際には尿潜血がなくても(+)になってしまうこともあるのです。尿潜血が(+)の場合は、尿を実際に顕微鏡で観察して詳しく確認することになります。尿白血球は主に膀胱炎で(+)になります。ただし尿白血球が出ていても、膀胱炎症状がなければ、基本的に治療は必要ありません。

ご自分でも結果確認を  

このように糖尿病治療のためには、多数の検査項目を確認していかなければなりません。しかし全ての項目を毎回詳しく説明していると、それだけで診察が終わってしまいますから、異常がない項目に関しては「他は異常がありません」とまとめさせていただく場合も多いです。ですがご自身の体のことですから、せっかく検査したものはぜひ確認してみてください。会計の待ち時間にでも検査結果を見直してみて、もし気になることがあれば次の外来で相談しましょう。

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